経験を重ねる毎、土が大切なことと、土と離れられない「宿命」みたいなものを感じるようになってきた。 いや大げさだな、「縁」と呼ぼう。
今年は小濁焼講座(水と薪学園)と、復興鈴に関わりながら個人の土の研究も進めていく。もちろん身の回りの土だ。
妙高市矢代地区三ツ俣の住民の協力を得て、西部の土も取り組んでみることにした。加えて、新井南部地域を回ってサンプリングした土もテストする。 採取場所や成型性も含めて、だんだんと使える土の採取のポイントがつかめてきた。 (なお、いつものように、ごく少量のピース制作用の粘土を採取する場合を除いてはきちんと地主の許可を得ていることを付け加えておく)
採取場所
まずはいつものように、そのまま焼いてみた結果を公開する。
1番の土の採取場所:三俣地内側溝脇
2番の土:同じ側溝の上流
3番の土:土砂崩れの下層
4番の土:別の斜面の小川下層の粘土層
棒状ピースの三俣:小川の上流下層の粘土層(h26小濁焼クラブ薪窯コースの作品の土採取場所)
棒状ピースの平丸:平丸奥山のがけ崩れ箇所
棒状ピースの猿橋:水がしみだしている山肌
破片ピースの大貝:道路端の崩れた岩
破片ピースの左:猿橋地内の道路端の崩れた岩
乾燥ピース
棒状ピース左上から「猿橋」「平丸」「三俣(小濁焼講座採取)」 練りピース三俣「1」「2」「3」「4」
いずれも採取してそのまま加水もせずに練って成形したもの
可塑性:今回粘りの強い場所を狙って採取しているので成形は楽である。 収縮率:乾燥状態で1割ほど…感覚的に極端に収縮するものは無い
焼成ピース
焼成条件:電気窯、酸化、1230度、一部に透明釉を掛けた
焼いた後下敷きから剥がしてある。確実に溶けているのは棒の平丸と、三俣の3。後者に至ってはブクブクに発泡して使用に適さない。平丸も1000度程度の焼締なら使用可能だろう。
左上の棒状猿橋、一番下の棒状三俣は優秀。後者は今回小濁焼講座で使用する粘土。特に砂気が強かったせいか、他のピースが収縮率82%に対して85%と期待できる。ただ、精製のため濾した後どうなるか?
練りピースの3は使用不可能の他1、2、4はまずまずだ。色もそれぞれに特徴があり、質感も悪くない。 1はキメがそろっていて鉄が強い。釉の発色もよい。 2は鉄が少ない。釉がしっとり馴染んで涼しげな風合いがある。 3は1と2の中間的な感じだがキメは粗め。釉のなじみもいい。 1〜4はさほど離れた距離で採取した訳ではないのに色も性質もハッキリ違いが現れ面白い。そして焼いてみないと分からないという事を実感できる。
本来であれば1,2,4も改めて採取して使ってみたいところだが残念ながら量が採りにくい。土採取は大抵こういった悪条件に阻まれる。
須恵器窯が当地で唯一発見されたという三俣
ちなみにこの三俣は須恵器を焼いた窯が見つかっている(諏訪窯 ↓写真 妙高市郷土資料室にて) 文中より:新井頸南地方の須恵器窯は、唯一新井市の三俣で発掘された諏訪窯跡があります・・
須恵器とは縄文→弥生→古墳時代と続くオープンエアーな焼きものの歴史の次に登場したクローズエアー・・いわゆる閉じられた形状の窯で焼いた焼きもので、酸素の供給が不足しているため灰色で、高温に焼かれるため焼き締りが良いのが特徴。(須恵器 ↓写真 妙高市郷土資料室にて)
砂っぽい岩は大抵溶ける
最後に猿橋と大貝の道路端で拾った岩を焼いてみた結果。
切り開いた道路端に崩れて落ちているのは粘土というより、砂泥が固まった岩で削ることができる状態のもの。 カラカラに乾いたり湿ったりを繰り返しながら風化するように砕けて崩れてくるようなものは、溶かせば一見粘土として使えそうな気がするが焼いていると大抵溶ける。 いつも期待するのは焼けた色だが、それほど特徴のある色が出なかった。細かく擦って釉にすればマットな柿釉になりそう。という感じ。発泡はなかった。