2016年10月4日火曜日

須恵器が焼きたい!

下の写真は、神戸市教育委員会文化財課 神戸市埋蔵文化財センター 須恵器 提瓶(すえき ていへい)http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/center/relics/art/details/37.html
です。
良い風合いですね、温度や窯の状態もさまざまだと思います。

(資料)

土師器と須恵器 

縄文土器や弥生土器に対し、古墳時代の土器は土師器(はじき、写真左)と須恵器(すえき、写真右)に大別されます。簡単に言うと、弥生土器の後継者である土師器に対し、朝鮮半島から伝わった新しい製法技法による須恵器。野焼きによる土師器に対し、窯(かま)焼きにより高温で焼いた須恵器です。赤褐色や暗褐色の土師器に対し、灰色の須恵器という色の違いや須恵器が釉(うわぐすり)を施したように見える(自然釉)のも、この温度の違いによります。」(山梨県考古学博物館より)http://www.pref.yamanashi.jp/smartphone/kouko-hak/standing/jousetu_mamechisiki.html
常設・土師器 常設・須恵器(東山南遺跡)

土師器と須恵器について(あびこ古墳発掘物語


小濁窯で須恵器焼成

2016年10月。小濁窯で須恵器を狙った焼成を行いました。(下の写真は温度別のテストピース)
  • 温度は、温度計によるものなので参考的なものです。
  • 画像加工により多少色合いが強く見えると思います(彩度を高め)。
  • テストピースは妙高の土を濾して、それを主成分に調整したもの。


須恵器は、それまで野焼きで行なわれていたものに対して、山の斜面に穴を掘って焼いたためそれまでよりは高温でしかも、クローズ窯であること、窯自体も完成度が低く湿っていた(私の推測)などから温度も上がらず、煙がもうもうと出る不完全燃焼状態で焼かれたのではないかと思います。そのため、色は灰色で陶芸の言葉で「強還元焼成」が代表的な雰囲気を出しているのでしょう。(とは言っても須恵器とされる中には、釉が流れたもの、色の明るいもの様々です)
また、当地の粘土の性質は鉄分も多く、一般的な陶芸の1230℃前後の温度では崩壊してしまうものがほとんど。逆に少し低めの1150℃くらいで充分に焼き締まることになります。高温で焼かれた須恵器は熱膨張に弱いので、それまでの土器と比べて直に火にかけるような調理器具には向かないものの、水がもれない酒器や瓶のような保存容器には持って来いです。

今回の焼成では、土師器風と須恵器風のデータをとることができました。またさらに温度を上げて自然釉が(多少)溶ける雰囲気をチェックし、最後焼き上げに還元をかける焼成を行いました。
土師器風の温度は野焼きの土器のように見えますがそれなりに焼き締まっています。須恵器風はまさに狙い通りです。但し、せっかくの高温窯ですので焼成の物足りなさは残ります。そこで高温釉は溶けないながらも、薪窯の雰囲気で無釉の土の表面がテカり、しかもしっかり焼き締まった強還元雰囲気を狙ったのが今回の焼成となります。
地元土を活かすのに良いプロセスではないかと思います。窯出しが楽しみ。

2015年1月10日土曜日

子どもたちの土プロジェクト最終アップ

最後のワークが行われたのは、昨年暮れ12月。整形が困難、熱に弱く溶けてしまう、と思われる土を除いて、自分たちの土でいよいよ作品作りとなりました。

自分で採った土単体ではやはり収縮や強度の問題から、市販の信楽粘土を調合しようということになり、配合についてはある程度お任せで制作。

当初薪窯での焼成を予定していましたが、例年に無い早い時期からの大雪のため、窯は雪の下。残念ですが、電気窯の還元で焼成することに。

釉は天然雑木灰の透明釉です。

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▲素焼き完了

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▲釉掛け完了

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▲本焼き焼成後

 

いかがでしょうか?手に触って肉眼でご覧いただけないのが残念です。

自然味あふれる、地元のやきものになりました。

2014年11月23日日曜日

子どもたちの土プロジェクト 続報

素焼きの状態を観察したあと、いよいよ1200度以上の高温で焼くテストを行う。
先生と相談した結果、やはり釉薬を溶かす温度(いわゆる一般的なやきものの本焼き温度である1230度前後)で試してみることになった。

上は、前回素焼きの状態。
本焼きにあたって、溶けたり発泡したりする心配があるので、目の細かい貫入土で容器を作って焼成することにした。

焼きあがりがこれ。1225度の電気窯、酸化焼成。
素焼きでは似たようなオレンジ色もずいぶんと変わるものだ。
ついでに、その下の生土とも比較しよう。


観察

  1. ねばり:整形するには土同士がくっつくための粘りと、形を維持する性質が必要。とってきた土をなんとなく水で練って四角く固めたものは素焼きでバラバラになってしまった。これはそもそも形を作れない。バラバラになったものは、小さい受け皿に入れて焼いた。
  2. 収縮率:一般に陶芸の土として適している収縮率は85%〜92%くらいが目安となる。
    12版は85%、8番は82%、14番は60%?程度まで縮んでいる。概ね収縮率が高く、割れる危険性が大。
  3. 耐熱性:本焼きで受け皿にくっついてしまうものは、一部が溶けているので適さない。くっつかなかったものは、8,14,17,23。 12は△、1と24はNG。
  4. 色:本焼きで黒〜赤茶は鉄分を含んでいる証。黒い粒が溶けているようなものは砂鉄。できればあまり無い方がよい。

陶芸粘土としてつかえるか?

もちろん、それぞれ何らかの工夫をして、作るものや温度を工夫すれば使えるはずだ。
だがしかし、一般的な釉を溶かし、器を作るとなると、先ずは土が溶けないもの。収縮が少ないもの、となる。
そういった意味で、単体で使えるものはかなり限定されてきて、しかも本番も同じように焼ける保証は無い。
事実、電気のテスト窯ではきちんと焼けているものでも上手く焼けなかったケースは何度もある。
つまり、鉄分が多い土は厄介なのだ。

今回のテストでは、おおむね黄色っぽい土が溶けずに残り、黒い土は釉のように溶けてしまった。
砂目の粘土は比較的安全だった。
ということで、まとめると、収縮率や粘りなど調整して、もしかしたら使えそうなものは、8、17、23。
中でも23は目が均一で砂鉄も少なく、釉をかけると美しくなりそうな感じだ。

2014年11月13日木曜日

よだれ〜!子供たちが土をテーマにやきものプロジェクト

近くの小学校で、土をテーマに一年間勉強してきた締めくくりに、自分で探した土でやきもの作りをしようというプロジェクトが始まりまた。
相談を受けた私。本日提案させていただいたサンプルを回収。即素焼きに入ります。
妙高地区、24カ所のピースです。
生でも美しい!
もうたまりません。


はい。翌日。
700℃で素焼き、このようになりました。
流石!先入観無し。

2014年10月28日火曜日

h26小濁焼講座のしめくくり

▼Sさんfacebookより「1280度の世界から生まれた陶器達・・・。今年で3年目・・・。まだまだ精進が足りませね!!」

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▼Wさんfacebookより「こんな色になったよ!
同じ釉薬でも、土が違うと色も違う。
不思議ねぇ〜〜(OvO)

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▼Kさんfacebookより「2014の窯、開きました。
年々欲が出るらしく、悲喜こもごも。最初の年は焼けただけで嬉しかったのに(^.^;)
10点以上作ってイメージ通りいったのは2点だけでした。

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解らない、不思議、嬉しさや残念が感動になります。

ヤキモノ好きは世に沢山いるけれど、陶芸好き…作ることに興味を失わないで欲しい。なぜなら自分が自然の一部になれるから。

小濁焼は、自分で土を取って、自分で釉をブレンドして、自分で薪を割って、身の回りの自然の不思議や脅威に出逢える素晴らしい体験です。

今年も素晴らしかった!

講評

「今年の土は難儀だった」

もちろん焼成における薪の扱いの難しさも勉強になったが、最後はSさんの写真で分かる通り、1280度まで上がってしまうという昇温に関しては収穫のある窯焚きができた。途中、ブロワーによる熾のコントロールも覚えた。

ともあれ何と言っても土。採取〜電気窯によるテスト焼成の時は、こんなにラッキーな土は無いと思えるほどだったのに、薪で焼いてみると・・。

それも意外にも整形でも割れ、素焼きでも割れ・・結果的に歩留まりの悪い土だった。

薪窯の難しさを改めて知った年。しかしいよいよ面白い作品が取れるようにもなり、大きなな成果のあった年だった。